さて4月早々ドビュッシーからNMLでの話題を。
ドビュッシー愛好家の間では最新の話題の一つとしては2001年に発見されたピアノ曲
Les soirs illuminés par l'ardeur du charbon「燃える炭火に照らされし夕べ」であり、すでに専門家においてレコーディングがなされているが、今一入手困難なものであるのは変わりない事態にて候。
このたびNMLのブリッジレーベルにてのベネット・レィマーBennett Lerner のドビュッシーピアノ曲集にて収録が確認された次第にて、ゆえに此処に報告せるものにて候。
BCD9219 DEBUSSY: Piano Music (Complete), Vol. 3
リンク
当曲は晩年の第一次大戦物資不足の折に、ドビュツシー家に石炭の補給を特例的手配をした石炭商への感謝が契機になった曲だが、実現の契機は石炭商のドビュッシーへの懇願としての「自筆の譜面の所望」ゆえであり、自身は余り乗り気で書いておらず、心なしか、某サイトの紹介言及にもある、前奏曲第一集の四番目の「音と香は夕暮れの大気に漂う」の素材が使用されており、多少労力が軽減されている、冒頭の音形が低音で移行され、一瞬同じ和声展開になり、前奏曲第二集の「カノープ」にでてくるジプシー風もしくはMTL風音階のフレーズが導入され展開、その後四拍子刻みに三連音の朗々とした主題が演奏されクライマックス形成して、その後消沈しながらも暖かい思いをこめて終止和音が低音と高音の隔絶した作曲家らしい配置で終わる。
ただヴァイオリンソナタ等と比べると、かなり前奏曲集の頃のドビュツシーの要素が強く、色々検証が要する可能性もあるが、創作力の減退の時期、過去の作品のスケッチから、短時間にてでっち上げた想像もできる次第にて候。
実にドビュツシーの前奏曲集は映像第三集のスケッチに書かれた要素が多く、これ真作ということ前提に意義考えると、そうした混沌としてなされた、斯様な創作現場と思考の一端を垣間見れる貴重な資料とも言える次第。