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六国峠@ドクター円海山の音楽診療室-無用な営みの、えも言われぬ、この上なき喜び

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水の束がその沢山の花を揺らし、月がそこを横切り・・・

てつわんこ様への月ネタおよびゆりかもめさまへのドビュツシーねたにて候

 さてドビュッシーといえば「月の光」が余り有名であり、ほかにも月の光を題材にしてもが多く。それらを全て掲げるときりがないので、今回の「噴水」そして次回予定の「月の光が降りテラス」あたりで・・・。

ボードレールの五つの詩(1887-1889)から「噴水」
当曲は歌曲集としては初期のドビュツシーの集大成的な作品であると同時に、ワーグナーの影響からドビュッシーの独自の創意あらゆるところで拮抗対立している、転換的な意義を感じ取れる作品にて候。

その後ドビュッシーはワーグナー先を探すように自作の詩で歌曲集「叙情的散文」を作成し自己の作風を確立する。

 なかでのその第三曲目の「噴水」はドビュッシーも後に管弦楽伴奏に編曲(1907)に選定するほど、絶品であり、旋法や半音階的メロディーにて、そのテクストたるフランス語を割り当てた朗唱直前の旋律に、二度や九度の開放感ある和音や全音音階で彩られた崩壊直前の転調を繰り替えす伴奏、水を表現した様々なピアノの伴奏はおそらく長らく論争となっているラヴェル対ドビュッシーのピアノ書法先駆論争(*)に終止符を打つ革新的な官能性を提示する。
(*)多くの言説がラヴェルの水の戯れとドビュッシー版画を比較論じ、さらにラヴェルの言説を鵜呑みにして「印象主義」と括られた作風でのピアノ書法の先進性をラヴェルする向きが多いが、しかしこれ以前のドビュッシーの歌曲でのピアノ伴奏の書法の存在を無視しており、実際革新的な先鋭的ピアノでの音彩はドビュッシーにも存在してたことを考慮にいれると、はたしてそのような断定ができるかもう一度よく考えてみよう

その情景は月夜の庭園の噴水で、まどろむ恋美と過ごすそのときの、流転する庭園の噴水を取り巻く情景と当事者(笑)の感情を描く次第であり。

全ての引用はしかたないので多少の紹介で。

最初に二度のクラスター的な律動和音の上に
「お前の美しい目がまどろんでいる、恋人よ!!」と感嘆あるさまが 解る半音階な旋律で歌われるあたり
この曲の歌詞的にもリフレーンたる「水の束がその沢山の花を揺らし、月がそこを横切り・・・」の箇所での前節より律動ある、上向き半音階は月の光との近親的発展ながら書法は先進的な和音付けがなされ、月の光と水のコラボエレーションをすごす恋人との素晴らしい一時が官能で歌われる
そして、後半の「夜がこれほど美しくするお前、お前の胸に(おいおい)体を預け・・・・」のくだりまで一気に心に訴える音彩が我々の聴覚を襲う次第。

 そして前述の管弦楽編曲は、ドビュッシーの繊細ながら、珍しくラヴェルばりの濃厚な工夫ある管弦楽編曲がきけ、その官能は数段上であり、ドビュツシー歌曲への入門としては最適なる次第にて候。

その音楽は「選ばれし乙女」や「春」やピアノと管弦楽の幻想曲の面影があり、そしてピアノ曲「バラード」も想起させ、゙なおも後の牧神の午後や夜想曲やペレアスに海の萌芽を含む摩訶不思議な混在を感じさせ、「海」のような層の厚い編曲により、それはなおさら高まり、熟成した芳醇な葡萄酒のような状態の音楽を堪能させる。

最初のこの管弦楽の版で推奨すると
ブーレーズが唯一録音を推奨
ラヴェル:歌曲集〈シェエラザード〉
オッター(アンネ・ソフィー・フォン) ブーレーズ(ピエール) ブーレーズ(ピエール) オッター(アンネ・ソフィー・フォン) クリーヴランド管弦楽団 ラヴェル / ユニバーサルクラシック

(あとシカゴ響楽団とのライヴにDVDに収録がある)
原曲は
旅への誘い(フランス歌曲集)
クロワザ(クレール) リーブス(ジョージ) ドビュッシー デュパルク トゥリュック(ジョルジュ) プーランク(フランシス) / 東芝EMI
ISBN : B00005GJDD
スコア選択:
歴史的名演奏に
ドビュッシー:歌曲集
スゼー(ジェラール) ボールドウィン(ダルトン) ブルジェ ドビュッシー ベルレーヌ / ユニバーサルクラシック
ISBN : B0006GAYC2
スコア選択:
名演奏で

ちなみに初期ドビュッシーに関わるなら必携アイテムやも・・・。
by dr-enkaizan | 2006-09-18 22:22 | ドビュッシー蟻地獄@円海山編
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