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六国峠@ドクター円海山の音楽診療室-無用な営みの、えも言われぬ、この上なき喜び

drenkaizan.exblog.jp

エルネスト・ショーソン生誕150年 クロニクル 管弦楽曲(1)交響詩「ヴィヴィアン」

こちらも1/20の生誕150年+1日よりエルネスト・ショーソンの作品を幾つかあつかう所存にて候。

最初は
余り話題にならないが?
純粋に作品扱いでは僅か2曲の「交響詩」のみの管弦楽曲は、斯様な数に反して・・・ぶっちゃけ(笑)それを聞いてからでもショーソンの「作風に人となり」および演奏について帰結し論じてからでも遅くは無いものにてござ候。

 あまりに「交響曲」「ポエム」のみ語られることはこの人物の作風の変遷と興味推移を捕らえることへの言説には説得力を欠ける次第でもあり、今後有名曲でエルネスト・ショーソンに波長ある方々は是非拝聴すること推奨せるものにて候。

最初の交響詩「ヴィヴィアン」Op51882に初演されるもの。
印象派絵画で有名な画家オーギュスト・ルノワールの仲介で知り合った、将来の婦人となるジャンヌ・エギュスデに献呈されている。

二人は翌年結婚新婚旅行はてつわんこさんのブログにある様にバイロイトへ、ショーソンとしては二度目の詣であり演目も二度目の「パルシファル」というグランドクラスぶりな次第で、ショーソンは数少ない人生の転機をパルシファルで迎えたことになり、当時のハイソの必携がワーグナーというキーワードにより動いていたこと物語る。

 この作品の概要は「円卓の騎士」の一エピソードに基づく粗筋をショーソンはスコアの余白に斯様な概要で記載している。

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プロセリアンドの森のヴィヴィアン(*甲)と魔法使いメルラン(*乙)の愛の場面


注:
(*甲)ヴィヴィアン=(*甲)ヴィヴィアーヌ
[Vivian] マーリンの愛人で魔術師。ランスロットの乳母。
(*乙)メルラン=マーリン
[Merlin] 魔術師。アーサー王伝説の円卓の騎士のひとり。 マーリン

 曲はワーグナー風の夢幻的楽想で、弱音器付き弦楽に導入された9度の属和音やハーフディミッシュな和声の律を持つホルンの弧を描くような旋律が。全体を支配する愛の褥にいる二人の情景を想起する。

 そして長々としっとりとヴァイオリンとチェロの対話をする半音階的でもあり跳躍する音程で盛り上がる後期ロマン派な旋律が歌わる、絵画的にして叙情豊かな想起豊かな描写は「ショーソンの特徴がすでにはっきりとうかがえる」(ジョルダン盤の笠羽映子女史感じ)、現在におけるファッションに近い余りに感覚的には単純衝動で語られるフランス音楽ブームの隔絶された偽りの評価は遺憾に感ずる次第でもあり。

さて続けてショーソンはライトモチーフを踏襲して、物語を進める。この愛の音楽果てに遠くからくるトランペットのメルランに助けを求めるアチュルス王(アーサー王)使者の」呼びかけ入る。

喇叭の叫び声、アチュルス王の使者達が魔法使いを森の中で呼びかけ探しまわる


その旋法的な特徴あるモティーフは幾分北欧風でもあり、懇願にみちた悲哀を含むものである

、それが出現する回を負う毎に音楽は使命感に満ちた盛り上がりと濃厚な官能が拮抗してゆく。
メルランは己が君主への使命を思い起こし、このヴィヴィアンの腕から逃れ、馳せ参じ様とせん。

 音楽はさらに闘争的な苦悩ある音楽に転化・・・それは魔法使いが己が君主への使命を思い出すことにより、褥の愛が終焉することを恐れたヴィヴィアンが引き止める故

魔法の場面、メルランを引き止め様とせんがため、彼より習いし魔法を使いヴィヴィアンは彼を眠りに就かせる、


ここで愛の歌が幾分の寂しい雰囲気で勝利するそしてホルンの跳躍フレーズに答えることがあることはもう無い、喇叭の呼びかけが重なり。

ある意味・・・?将来の婦人に「君に負けた」という心情の裏返しを当時のオサレで表現したということではとも思え此処での音楽の二人は「ショーソン夫婦」という訳か?

そしてさんざしの花(+)で彼を包む
 
のくだりと思える音楽は序奏の音楽の再現の後幾分ケルティクな子守唄風モティーフ(*)がオーボエそしてフルートで現れ非常に!!装飾感と象徴性が混合している耽美極まる素晴らしさであり、ショーソンの音楽の独創的なワーグネリズム消化が見られ、その装飾要素での耽美的な近代書法の使用にはドビュッシーの選ばれた乙女の先駆的なあるいはシンクロニシティーな類似を感ずるもの。
(+)Crataegus cuneata,Crataegus oxyacantha
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(バラ科落葉樹の低木)色:白(前者)赤紫・桃色(後者)五月ごろ咲く花は一重なら五弁、八重咲きもあり、枝に棘がある、その実は中国の漢方や菓子の材料としてポピュラーなもの、
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これとは別に茨(野薔薇)とも言われる説もあるが・・・・それは花と実が多少似ていて棘が在るゆえ。みれば違いは明確なれど、文章では樹皮に言及しないと区分は難しい。
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(*)三拍子的な韻律が歌めいておりもしかすると?古謡の引用か?聞いたことのある節なの詳細キボンヌ也 プラッソン盤では10:05 カルタンバック9:23 あたりジョルダン9:56

そしてメルランの眠りをハープの上向きアルペジオと高音の木管の和音で曲は閉じられる。

 音盤はショーソンの恩人と最近の人々から持ち上げられるフルネのデンオンには録音が無いのが遺憾、オールショーソンで音盤を企画出来ないメーカに責任はあるが、軽薄に曲勉強不足でコンサートで随所で祭り上げる俄かのフルネファンは交響曲を紹介すればショーソンが済むわけでないこと知るべしやも。


なお懸命な方々に伝えんとするが?フルネはショーソンもだがダンディーの「イシュタール」を日本で取り上げたことに「神」を感じる次第。

アルミン・ジョルダン指揮パーゼル交響楽団

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廉価で再発されており入手しやすい、自然なメリハリがあり上品で見通しのよい録音で素直に聞ける演奏

プラッソン指揮 トゥールーズ市管弦楽団
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ジョルダンと甲乙つけ難いがフレーズの明晰ではこちらに分があり、なお次回に取り上げるアルベニスとドビュッシーを垣間見える「祭りの夕べ」が聞けるメリットあり
カルタンバック指揮ナンシー交響楽団
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聞くのに集中力を要するが?そのオケの癖が嵌るととんでもない「萌え」になる破壊力あり。
オケ世界による一部声優オタのあいだで受けている世評の「能登かわいいよ能登」現象と同等なのか?(笑)

さて祭りの夕べに交響曲と進みませうか?

乞うご期待・・・・(なのか?)


戯言

ヴィヴィアンと聞いて
リーならあなたは歳ですね。

スーなら青いね

今なら
玉置勉強の「東京赤頭巾」の
アーティファクトの殺し屋美少女のヴィヴィアンちゃんでしょう

(わかるかな・・・?)


 
by dr-enkaizan | 2005-01-21 03:49 | 解説のない音盤紹介
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