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六国峠@ドクター円海山の音楽診療室-無用な営みの、えも言われぬ、この上なき喜び

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たった一門のパリ砲により生まれた「恨歌」

今度のキャロルは「もう家のない子供達のクリスマス」
てつわんこさんのドビュッシーねたに別の観点から光を当ててみる。


 当曲は歌詞の内容が「戦争の惨状を語りながら」も「j反戦的」な帰結がなされないゆえ、多くの講評にて、その芸術の普遍的価値すら疑うような、不本意で無知蒙昧な思考停止的な単一的な帰結がなされる多し。

 しかしこの曲をてつわんこ氏の言う「ドイツ参戦歌」と捕らえると、この曲の「慟哭」の背景と救いなき「許されない救済なき憎しみ」の果てに、作品の抱える時代を雄弁に語りえる要素がたぶんにあり、この曲の芸術的な普遍価値を存在しえることを再度考慮すべきを悟ることしかり似てござ候。

 我々は、てつわんこ氏の正論の観点に敬服すべし、なぜ「ドイツ参戦」なのかという意味こそ重要なる次第である。


 重要なことは成立の背景にドビュッシーが生い立ちに秘めていた「トラウマ」が第一次大戦のドイツ軍の行った 作戦をきっかけにフラッシュバックし、斯様な様相の表現になった心理的症例がありうることを考慮すると、芸術作品の持つ時代を超えた普遍と同時にある、時代の心を体感しうる作品であるかんでんが生じるのは必至なることしかりでありなん。


歌詞はドビュッシーの自作であり、初期の「叙情的散文」以来のものであり、その趣の優雅な時代の象徴的なものから、現実的訴えになり、一線でへだてらるるもの。

最初に語られる「パリ」の惨状がトラウマを生み出す未曾有の出来事なのである、

僕らにはもう家も無い!
敵がみんな、みんな、みんな奪ってしまった、
僕らの小さな寝床までも!
学校も僕らの先生までも焼いた。
教会もキリスト様の像も焼いた。
動けなかった貧しいおじいさんも焼いた!



 ここで注意してほしいのはあくまでも「戦争」でもこの場所は「戦場」ではなく市街地の惨状なのである。これは続く節からも判る次第である

らにはもう家も無い!
敵がみんな、みんな、みんな奪ってしまった、
  僕らの小さな寝床までも!
そうだ! パパは戦争に行っている、
惨めにママは死んだ!
こんなめにあう前に。
どうしたらいいの?


この市街地は「パリ」なのである
一般的市民をこの歌詞のように巻きもむのは、いったい何か?

 ここで「戦争」で思考停止していると・・・・単なる戦災や空襲と思われがちだがこの時代に焼夷弾による市街地への絨毯爆撃の概念すらない、焼夷弾による市街地絨毯爆撃は第二次大戦のアメリカ空軍のルーカスメイによる日本市街地殲滅あたりから一般化し、後電子兵装のピンスポット爆撃の登場まで、ベトナム カンボジアと悪評が続く、多くは表向きはゲリラ掃討といわれるが・・実は心理的なダメージによる国威の低下が、効果的ながら卑劣な陰の目的であるのは言うまでもない。

  これは敵国ドイツ軍が北部フランスでほぼ東西に一直線となった前線を挟んでの塹壕戦での進展なき戦況を打開すべく、相手に心理的ダメージを与えるために、クルップ社により一門だけ作成された長距離射程を持つ大口径軌道砲「パリ砲」(ベルタ砲)での、パリへの無差別砲撃に他ならない。

 アウトレンジによる攻撃、これにより戦術は前線の兵士をこえて直接戦争に市民を巻き込む時代に突入する。


 戦火に苛まれるパリをみて、砲撃の音を聴きドビュッシーは畏怖と怒りをいただいており。

 恐らく芸術的な対抗心としてドイツ文化への拮抗のほかに、幼きころの普仏戦争でのパリ隆起にその後のパリコミューン隆起での将校だった父の社会的地位の脱落と生活の苦労、それのもとのプロイセンへの憎しみ、そしてきな臭い市街地等「数々のトラウマ」が「病床の身の上」へ去来していたのは想像するにたやすく・・・。

 その点の創作者の芸術上での「叫び」を考慮すると「反戦的」内容でないことなどそうでもよくなる思いあり。

 忌むるべきは「ドイツ」といっているがその実は「外道な戦略」にこそ矛先がいっているとも捕らえらる事似て候。

 さて当該曲オリジナルは歌曲ながら弟子のアンゲルブレシュトがピアノ部分を管弦楽に編曲したものが録音あり。a0007939_3245332.gif

編曲者自らの録音でテスタメントより復刻競るもの也。
なお平島氏の評伝には編曲の存在がかなり前から記述されるも、当該の編曲クレジットはテスタメントからの言及という曰く尽きのもの、さて悲壮で勇壮さを管弦楽は損なうことなくさすがに弟子という感慨深き演奏我強く推奨せり。
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フランス国立放送管・マドレーヌ・ゴルジュ(Sop)

TESTAMENT SBT1213
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by dr-enkaizan | 2004-12-02 03:26 | クラシック
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